イタリア漆喰 ラスチコ

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創業期ものがたり 第 8 話

第 8 話   終 戦                 
    
     
旧制中学への進学を阻まれたシゲオは、小学校を卒業後、当時”尋常高等小学校”と呼ばれていたいわゆる中学校のような2年間の義務教育課程へ進みました。
・・・とは言っても、既に国家総動員だの学徒出陣だのというご時世で、「学校」が”学校”であるはずがありません。 はっきり言ってシゲオには、この2年間、”学校へ行く”というのは、 大嫌いな ”野良仕事” を意味していたのです。 そっちの方は、ほぼ毎日、終日さぼっては、村に巡回でやってくる本を独占しては徹底的に読み漁り、新聞で文字や文章を覚えました。 法律の本は巡回ではなかったので、勉強はできませんでしたが、シゲオは、日本史や経済に関係した本が大好きで、その内容は、すぐに暗記できるほどスルスルと頭に入りました。
学校で勉強させてもらえなかった事については、どこに持って行きようもない不条理を感じていたシゲオでしたが、シゲオと同じく旧制中学に合格できると山口先生に言われて進学した西村君は、旧制姫路中学2年間の後、陸軍幼年学校へ進んで軍隊の集団生活が始まっていたそうです。
14歳や15歳くらいのまだ子供に、”優秀”ということで、”人間魚雷”や”特 攻”へのレールを敷いていたのが、時代の現実なのでした。

「家業を継がせたいでの学校へはやらせない」という俊次の考えは、そこだけをとると、親の身勝手で子供から教育の機会を取り上げたかのようでもありますが、俊次自身は、義務教育以上の教育を受け、大企業に勤務した経験を持ち、開戦当初から「アメリカ相手の戦争に勝てる訳がない」と思い込んでいたことからしても、シゲオを”戦争”という時代から、出来る限り無縁のところに置いておきたかったのかったのかもしれないと筆者には思えてなりません。

俊次とちかは、自作の田畑がありましたから、食料に困窮することはありませんでした。瓦をどんどん製造するということはなくなっていましたが、瓦に変わり、バンコ(bancoボルトガル語由来)と呼ばれる温熱容器を製造したり、家庭用燃料としての炭を売ったりして戦禍をしのいでいました。
 昭和15年8月15日正午から始まった玉音放送の際、国民に起立を求める最初のアナウンスがある頃には、内容を覚悟をしていた俊次は、ラジオが聞こえないどこかへ行ってしまいました。わかってはいたものの、さすがに、”敗戦”を突き付けられるのは、衝撃・屈辱と不安が入り混じり、拝聴したくなかったのでしょう。
日頃から俊次の戦争に対する考えを聞いていた家族も、村人もみんな、ショックで信じられない、信じたくない。という思いでした。
・・・ただ一人、シゲオを除いて。

その日は、シゲオ15歳になったばかりのアッ暑い日。
「待てよ。日本の国、こんな、年寄り・女・子供しかおらへん状態で、今残っておるボクらがどないかせんとあかんやろ。そうやで、ボクらの時代になるんや!」と、ひとり、ものすごいチャンスを感じて秘めます。そして、その日のうちに、母ちかに、「瓦の炉はいつでもちゃんと動くんか?これからは瓦も徐々に売れるやろぅから、炉がちゃんと動くように準備しとかなあかん。」と口走っていました。
それを聞いたちか、その時は長女ミチコも3歳になっており、3男1女を抱えたお母ちゃんは、ハッとし、何年か前の、やる気マンマン・突撃モードに気持ちを切り替えたのでありました。
       
          
      
       
    ★ 余談ではありますが・・・、    
   
    シゲオの同級生の西村君は、終戦の年、国内6か所に設置されていた陸軍幼年学校の、大阪(南河内市)に4月に配属されて、
    日本軍の食料の後方支援(物資運搬)の任に就くべく、陸軍幼年兵としての集団生活を送っていたそうです。

    8月15日の玉声放送の後、8月16日に堺市に敵上陸の噂があり、幼年兵が捕虜とされないよう早く解放しようと、教官らは、
    どさくさ状態で、親元へ返そうとしました。
    (西村君によると、教官からの指導や注意は穏やかで、暴力や罵声などなかったのでした。この時の対応も極めて人間的です。)

    8月16日には「堺へ敵上陸」の噂がデマだとわかり、8月17日に「戻り号令」が発せられ、改めて8月18日「解散命令」を受けて
    西村君は無傷で故郷へ帰ることができました。
    今もお元気で地元でお暮らしです。
         



      
     
      
        

          
             
        
次へつづく・・・ 第 8 話 「 家 出 」 http://d.hatena.ne.jp/mikamsmatuuu/20130928
 
         
            
       
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